【資本の話 #2】赤字でも資金調達できる?「資本性ローン」という選択肢

※本記事の内容は、2025年9月14日時点の情報に基づいたものです。

資金を調達するには銀行融資しかない

そう思っていませんか?

この連載「借入だけじゃない!会社を強くする資本の話」では、借入以外の資金調達方法を活用して、会社をもっと強くするヒントをお伝えします。

第2回目の今回は、「資本性ローン」という選択肢について見ていきましょう。

前回の記事でも解説したように、借入は便利でよく選ばれる資金調達方法ですが、「借りられる額には限界がある」という現実もあります。
特に、赤字や新規事業に挑戦している会社では、将来のキャッシュフローの見通しが不確実であるため、銀行が返済能力を重視する融資審査に通りにくかったり、融資条件が厳しくなったりすることがあります。

そんなときに注目されるのが 資本性ローン(資本性借入金) です。

通常の借入とは異なり、借入でありながら「自己資本的な性質」があり、赤字を調達できる可能性があります。

資本性ローンとエクイティファイナンスの違い

「資本性ローンって、前回の記事にあったエクイティ・ファイナンスと同じもの?」と思われた方もいるかもしれません。
結論から言うと 別物です。

  • エクイティファイナンス:株式を発行して資本そのものを増やす方法。返済不要だが、株主が増える。
  • 資本性ローン:あくまで借入。ただし条件次第で「自己資本に近い」と評価されるため、赤字期でも利用できるケースがある。

どちらも「財務基盤を強く見せる効果」がありますが、性質は異なります。
資本性ローンは、言わば 借入と資本の“ハーフ”のような資金調達手段 です。

資本性ローンの最大の特徴は、当面の返済が不要な点にあります。
契約によっては、元本の返済は契約終了時にまとめて行い、それまでの間は利息だけの支払いでよい場合もあります。

言うなれば、

すぐに返さなくていいので、今は事業に投資をして業績を伸ばしてください!

という位置づけのお金なのです。

そのため金融機関は、資本性ローンを“自己資本に近いもの”と評価します。
これにより財務指標が改善し、他の金融機関からの追加融資も受けやすくなる という大きなメリットにもつながるのです。

資本性ローンの主なメリット・デメリットをするとこちらの通りです。

<資本性ローンのメリット>
資金繰りが楽になる
返済が当面不要なので、手元資金を新規事業や研究開発に集中できます。
金融機関からの評価が上がる
自己資本扱いになるため、財務基盤が強化され、次の融資にも有利に働きます。
赤字でも利用できる
将来性があれば調達可能で、利益がまだ出ていない成長期の会社にもフィットします。

<資本性ローンのメリット>
金利がやや高め
通常の融資よりリスクが高いため、利率は少し割高になることがあります。
・最後にまとめて返済が必要
契約満了時に一括返済するケースが多いので、その資金準備は必須です。
・入念な審査準備が必要
将来性を重視するため、事業計画の説明などを丁寧に準備する必要があります。

このような特徴から、資本性ローンは、

  • 新規事業を立ち上げたいけれど、当面は赤字が続く見込み
  • 設備投資や研究開発など、すぐに成果が出ない投資をしたい
  • 銀行から「自己資本比率を上げましょう」と指摘されている
  • 返済負担を抑えながら、成長資金を確保したい

といった企業に是非検討いただきたい資金調達の選択肢です。


資本性ローンは「借入と資本のいいとこ取り」をしたような制度で、赤字期や新規事業の挑戦期に会社を支える強力な選択肢です。
エクイティ・ファイナンスとは異なりますが、両者を理解してうまく使い分けることで、資金調達の幅がぐっと広がります。

次回は、資本金を増やすと銀行評価はどう変わる? について解説します。

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