※本記事の内容は、2025年11月1日時点の情報に基づいたものです。
※記事中の画像は、生成AIを用いて作成しています。
以前の記事でも紹介した「中小企業成長加速化補助金(第1回公募)」の採択者が公表されました。
本制度は、成長意欲の高い中小企業を対象に、事業拡大や組織強化を後押しする新たな補助金として注目されています。
今回の前編では、公開された採択結果をもとに、採択率や事業テーマの傾向など、データから見える“採択の実態”を整理してみましょう。
採択結果の全体像

中小企業庁が実施する「中小企業成長加速化補助金」。
令和7年度第1回公募では、応募総数1,270件のうち採択は211件と、採択率は約16.6%でした。
同じく中小企業向けの補助金である「ものづくり補助金」第20次公募(令和7年10月発表)の採択率が33.6%(応募2,453件に対して825件が採択)であることを踏まえると、本補助金は、競争率がより高く”選抜型”の性格を持つことがうかがえます。
地域別では、関東圏(特に東京都・神奈川県)で多くの企業が採択されていますが、これは採択率に地域差があるというよりも、そもそもの企業数や応募件数の分布を反映したものと推察されます。
採択事業の内容を見ると、デジタル化・DX支援、製造プロセスの高度化、新サービス創出、人材育成・組織体制強化など、「成長加速化」の名にふさわしい取組みが数多く見られます。
既存事業の改善に留まらず、大胆な変革や新たな挑戦を見据えたテーマが目立つのが特徴です。
以前の記事でも紹介した通り、本補助金の応募申請者は、投資計画書等の提出書類をもとに審査される「書面審査」と、経営者等による「プレゼンテーション審査(対面審査)」の2段階で審査されることになっています。
プレゼンテーション審査(対面審査)の詳細は公表されていませんが、zoomによるリモート形式で、審査官は3名、時間は1時間程度(審査官1名につき15分程度)という形式で進められるようです。
「金融機関の確認書提出率」が意味するもの

採択倍率はおよそ6倍。
6社に1社しか採択されない狭き門でしたが、
注目すべきは「どのような企業がこの壁を越えたか」です。
採択企業において、金融機関の確認書提出率は全体の96%を超えました。
これは、単に成長意欲を示すだけでなく、実行可能な計画を描き、外部との連携体制を整えていた企業が多かったことを意味します。
言い換えれば、「資金調達の裏付け」や「金融機関との協働体制」を具体的に示せた企業ほど、計画の実現性を高く評価され、採択に繋がったと考えられます。
採択企業の数値的傾向

100億企業成長ポータルで公表されている、採択企業の事業計画値を平均でみると、申請企業全体と比べて次のような差が見られました。
| 指標 | 採択企業平均 | 申請企業全体平均 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 全社売上成長率(※1) | 26.4% | 17.8% | 採択企業は全体平均よりも高水準 |
| 全社付加価値増加率(※1) | 27.5% | 18.4% | |
| 売上高投資比率(※2) | 53.5% | 32.7% | |
| 従業員及び役員の1人当たり給与支給総額の増加率(※1) | 5.9% | 4.8% | |
| 給与支給総額の増加率(※1) | 17.0% | 9.3% | |
| ローカルベンチマークの得点(※3) | 21.6点 | 20.8点 | |
| 最新決算期の売上高 | 29.5億円 | 40.7億円 | 採択企業のほうが現時点での売上規模が小さい |
| 補助事業全体に要する経費(税抜) | 12.6億円 | 9.7億円 | 採択企業のほうが、より大規模な補助事業を計画 |
※1:年平均上昇率
※2:最新決算期における比率
※3:ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールのこと
これらの傾向から、「すでに成果を出している企業」よりも、「これから伸ばす筋道を明確に描けた企業」が採択された可能性があります。
なぜこのような差が生まれたのか。
どのような“描き方”が評価につながったのか。
後編では、その背景を考察していきましょう。

