※本記事の内容は、2025年12月08日時点の情報に基づいたものです。
※記事中の画像は、生成AIを用いて作成しています。

こんなに頑張っているのに、なぜ利益が出ないのか?
そう感じたことはありませんか?
この連載「頑張っても利益が出ない?“利益体質”をつくる経営の話」では、会社の数字を“儲ける力”の視点から見直し、利益を生み出し続ける経営のヒントをお伝えします。
前回の記事では、「どれだけ売れば黒字になるのか?」が分かる指標として限界利益を取り上げました。
第3回の今回は、その発展として「限界利益率を高めるための3つの方法」について見ていきましょう。
限界利益率とは?──利益の“残りやすさ”を表す数字


「限界利益率」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実は “利益の残りやすさ” を表す重要な経営指標です。
前回取り上げた「限界利益」は、
売上が1増えたときに、どれだけ利益が増えるか
という“金額”でした。
一方で、限界利益率は“割合”を示す指標で、
売上のうち、どれくらいが利益として残るのか(=売上高に占める限界利益の割合)
を表しています。
同じ1,000万円の売上でも――
- 限界利益率30%
- 限界利益率50%
では、後者のほうが圧倒的に利益が残りやすく、黒字になる売上高のラインも低くなります。
つまり限界利益率は、「効率よく利益を生む力」そのものを測る指標といえます。
限界利益が教えてくれる3つのポイント


限界利益率は、次の3つのアプローチで改善できます。
限界利益率を上げるための直接的な方法は「価格の見直し」です。
価格の見直しというと「値上げ」をイメージしがちですが、実務では以下のような現実的な調整から始めることができます。
- 値引き前提の見積りをやめる
- 小口案件は最低価格を設定する
- 無償サービスをオプション化する(結果的に単価が上がる)
- 高付加価値商品の訴求を強める
一律の値上げではなく、“価格の歪みをなくす”という視点が大切です。
変動費は、売れた分だけ増える費用です。
そのため、ここを改善すると限界利益率に効きやすく、実務効果も大きく出ます。
- 仕入価格・外注費の見直し
- 工程のムダ取り(ロスの削減)
- 歩留まり改善
- 外注先の見直しや条件交渉
小さな改善であっても、積み重なると大きな利益改善につながる領域です。
限界利益率は「何をどれだけ売るか」に大きく左右されます。
つまり、売上の組み合わせ(セールスミックス)を変えるだけで利益率が改善することが少なくありません。
たとえば:
- 限界利益率の高い商品・サービスの比率を増やす
- 同じ売上であれば、利益が残る商品・サービスに重点を置く
- 提供するメニューの組み合わせを見直す
たとえ売上を増やさなくても、「売り方を変えるだけで利益を増やす」 ことも可能なのです。
限界利益率が高まると経営が変わる


限界利益率を改善すると、会社の意思決定の質とスピードが変わります。
◎ 黒字ラインが下がり、売上の波に強くなる
限界利益率が高まると、黒字になるために必要な売上(黒字ライン)が下がります。
その結果、多少売上が上下しても黒字を維持しやすくなり、経営が安定します。
◎ 少ない売上でも利益が出る「効率の良い会社」に
必要以上に売上を追いかけなくても、利益が残る体質づくりが可能になります。
◎ 経営判断がブレなくなる
案件受注・値引き・新商品などの判断が、限界利益率という基準で判断できるようになるため、迷いが減ります。
限界利益率の改善は、価格・変動費・ミックスの調整といった、身近な取り組みの積み重ねです。
次回は、限界利益と並んで経営の基礎となる「固定費(経費構造)」の見直しを取り上げます。

