※本記事の内容は、2025年7月28日時点の情報に基づいたものです。
前回の記事では、「100億企業への成長に向けて基盤となる要素」のうち、「経営者ネットワーク」について紹介しました。
今回は、引き続き「100億企業への成長に向けて基盤となる要素」の観点から、「成長資金の調達方法」について見ていきましょう。
参考資料は「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」の報告書です。
中小企業が成長資金を調達する方法

中小企業が成長を実現する上では、成長投資が必要不可欠です。
成長投資を行うための資金、いわば「成長資金」を調達するための主要な手法を整理すると、以下のようになります。

デット・ファイナンス | エクイティ・ファイナンス | メザニン・ファイナンス | |
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概要 | ・金融機関等から資金を借り入れる。 ・貸借対照表上は負債として計上され、返済が発生する。 | ・企業が新株を発行し、出資を募る資金調達手法。上場も含む。 ・貸借対照表上は純資産の、株主資本として計上され、返済の必要がない。 | ・デットとエクイティの中間的な手法。 ・デットよりも金融機関等の返済順位が劣後する。 |
特徴 | ・(支払配当金等と比較して)支払金利は低い(資本コストは低い)。 ・(支払配当金と異なり)支払金利は損金に算入することができるため、税負担を圧縮することができる。 ・約定返済中は、特段の定めがない限り、債権者からの経営関与は少ない。 | ・返済の必要がないため、財務基盤の安定や信用力の向上につながる。 ・デットと比較して、資本コストは高い。 ・ファンド等から経営の助言・関与を期待できる一方、真摯な対応を要する。ファンドの前提とするEXIT(IPO、M&A)に、目線合わせが必要。 | ・主に政府系金融機関が取り扱う。 ・融資期間が長く、長期的な取組に馴染む。 ・金融機関の審査では自己資本とみなされ、他の金融機関の呼び水効果がある。 ・利率が業績に連動し、業績が悪い時は利率が低、業績がよい時は高くなる。 ・支払金利は損金に算入可能。 |
備考 | ・リース取引により設備投資の資金を賄うケースもある。 | ・株式投資型クラウドファンディング等の新しい手法も登場している。 | ・上記資本性ローンのほか、買戻しを前提とした株式の形態もある。 |
※「デット」には融資・社債等を含む。「エクイティ」には普通株式・種類株式(議決権なし)等を含む。「メザニン」には種類株式(買戻し条項)、資本性劣後ローン等を含む。「利用あり」は累計3,000万円以上の調達を実施した企業のみでカウントしている。
グラフを見て分かるように、売上高規模が高くなるほど、エクイティ・ファイナンス、メザニン・ファイナンスの利用割合が高くなっています。
また、外部資本を入れるエクイティ・ファイナンス、デットとエクイティの中間的な特徴を持つメザニン・ファイナンスは、今後、成長資金調達の選択肢の一つとして活用の促進が期待されているものです。
エクイティによる成長資金の調達

エクイティ・ファイナンスとは、企業が新株を発行し、出資を募る資金調達手法のことです。
貸借対照表上は純資産の、株主資本として計上され、返済の必要がないという特徴があります。
資金調達をデットのみで行おうとすると、事業性評価がしやすい既存事業の周辺にとらわれてしまいがちなので、成長のためにリスクを取る新しい挑戦に向けた資金調達手段としては、エクイティ・ファイナンスが有効です。
また、エクイティ・ファイナンスは、「デットよりも効果的な資金調達が可能となるケースがある」「手法によっては経営権への影響を抑えることができる」といったメリットもあります。
一方、「外部資本を入れると経営権を失うのでは」等、エクイティ・ファイナンスに対する恐怖心、ネガティブなイメージを抱いている経営者もおり、デットに比べて利用経験数は少ないのが現状です。
成長に向けては、経営者がエクイティ・ファイナンスに対する正しい理解を身に付け、有効活用することが重要です。

メザニンによる成長資金の調達

メザニン・ファイナンスは、デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの中間に位置する資金調達手法です。
デット・ファイナンスよりも金融機関等の返済順位が劣後します。
返済が一定期間猶予され、長期的な取組に適している点はエクイティ・ファイナンスと共通する一方で、株式の希薄化が生じないため、経営の自由度等を重視する企業にとっては、より活用しやすいものとなっています。
資本性劣後ローンはコロナ禍における資金繰り安定のための調達方法として注目されましたが、本質的には成長資金の調達に適した特徴を持ちます。
成長に向けては、成長資金の調達方法として、メザニン・ファイナンスの活用も検討していくべきでしょう。

<資本性劣後ローンのメリット>
・借入金が負債ではなく資本としてみなされるため、民間融資を誘発する効果がある
・業績連動型の金利設定となるため、業況悪化時は金利が低くなる
今回は、成長資金の調達方法についてみてきました。
資金調達というと、金融機関からの借入といったデット・ファイナンスが真っ先に思い浮かぶ方も多いと思いますが、成長に向けては、エクイティ・ファイナンス、メザニン・ファイナンスといった手法も候補になり得ます。
それぞれのメリット・デメリットを理解することで、より効果的な資金調達を選択することが可能になります。
次回の記事では、100億企業への成長に向けて基盤となる要素のうち、「活用人材の確保・育成、組織体制の構築」について詳しくご紹介します。