【中小企業施策 #最終回】中小企業施策の重要ポイント

※本記事の内容は、2025年8月19日時点の情報に基づいたものです。

これまで、約20の記事で連載してきた「中小企業施策の重要ポイント」ですが、今回がいよいよ最終回です。

今回の記事では、これまでのまとめとして、「なぜ100億企業の創出が推し進められているのか」「100億企業の創出に向けた政策の方向性」を見ていきましょう。
参考資料は「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」の報告書です。

連載⑥でご紹介した通り、100億企業は輸出等により域外需要を獲得し、域内調達により地域に新たな需要を生み出すといった特徴を有しており、こうした企業が地域の中核的な企業として成長・発展していくことで、地域経済も発展することができるとされています。

一方で、地方には100 億企業は少ない状況です。
成長のポテンシャルを持つ企業は存在しつつも、成長機会を得られずに芽が出にくい状況であると考えられ、地方において100 億企業の創出を促進していくべきという提言がなされているのです。

100億企業を創出していくためには、まずは成長志向の経営者を増やしていく必要があります。
また、本連載で見てきたように、中小企業の成長における課題は、成長段階に応じて異なります。

そして、これら課題に対する打ち手を実行するための基盤として重要な要素は、

  • 成長機会の発掘・成長に資する経営者ネットワーク
  • 成長資金の調達
  • 人材の確保・育成と組織体制の構築

の3つとされており、100億企業の創出に向けた政策もこちらに対応したものとなっています。

政策の方向性①:より多くの経営者が100億企業を目指しやすくなる仕掛けづくり

100億企業創出の加速に向けては、 「中小企業の成長を応援する社会の機運醸成を図り、成長志向の経営者を増やすこと」「成長志向の経営者が100億達成の成長機会を見いだせる、質の高い経営者ネットワークを提供すること」が重要ですが、一方でこうしたネットワークは存在しません。

このため、行政の主導により「売上高100億円への成長」という共通の目標を持った多様・異質な企業の経営者ネットワークを形成することが効果的とされています。例えば、経営者が100億企業を目指すことを宣言し、宣言した企業のネットワークを構築することが考えられます。

その際、優れた経営者を称揚して社会的評価を高め、成長志向の中小企業を応援する社会的機運を醸成するなど、100億企業を目指す経営者を継続的に増加させていく仕組みを構築することも重要です。

政策の方向性②:資本性資金に対するイメージ転換・活用促進の先導

エクイティ・ファイナンスは、既存の事業から外れた新規事業を行うときなど、企業の新たな挑戦において有
効な資金調達手法
である一方で、「外部資本を入れると経営権を失うのではないか」等のネガティブなイメージを抱いている中小企業経営者も多くいます。
エクイティ・ファイナンスへの正しい理解を醸成していくことが必要とされています。

また、メザニン・ファイナンスは、返済が一定期間猶予されるケースが多く、長期的な取組に適しているほか、借入金が負債ではなく資本としてみなされるため、成長資金の調達に適した特徴を持ちます。
今後は政府系金融機関による資本性劣後ローンの提供拡大など、メザニン・ファイナンスの成長資金の調達方法としての認知の拡大と更なる活用の促進が求められます。

政策の方向性③:組織の総合的な能力向上に向けた人材確保・育成、組織体制構築への支援

中小企業が成長していくためには、成長段階に応じた、組織体制と整合的な人材確保・育成を行い、「組
織としての総合的な能力」を向上させていくことが必要です。

経営者本人、右腕人材・経営幹部の経営リテラシー向上に向け、中小企業大学校による研修や中小機構のハンズオン支援の活用、人材活用ガイドラインの活用等を促進していくべきとされています。
その際、成長志向の経営者を対象とした研修や、企業の実情に合わせた支援の提供など、成長志向企業を応援する環境の整備が重要です。

また、右腕人材・中核人材や、AI等の新しい技術の専門人材、CFO人材等の獲得にあたっては、官民のマッチングサービス等の更なる活用促進や、M&Aへの支援なども政策に求められます。


今回は、これまでの記事を復習する形で「なぜ100億企業の創出が推し進められているのか」「100億企業の創出に向けた政策の方向性」ついて見てきました。

本連載「中小企業施策の重要ポイント」は今回で終了です。
今後も国の中小企業政策や補助金の情報などをお届けしていきますので、是非定期的にチェックしてみてください。

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