【中小企業施策 #17】人材の確保・育成、組織体制の構築(後編)

※本記事の内容は、2025年8月19日時点の情報に基づいたものです。

前回の記事では、「100億企業への成長に向けて基盤となる要素」のうち、「人材の確保・育成、組織体制の構築」に着目して、その重要性や具体的手段について紹介しました。

今回は、引き続き「人材の確保・育成、組織体制の構築」に着目した記事の後編として、中小企業庁の取り組みや官民様々なマッチングサービスについて見ていきましょう。
参考資料は「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」の報告書です。

中小企業庁では、雇用・人材支援の一環として、「人材活用ガイドライン」を公表しています。
このガイドラインでは、経営戦略と人材戦略を一体的に構想・実践することの必要性や、経営者が取り組むべき人材活用策のポイント、その際に利用できる支援策が整理されています。

STEP
経営課題と背景にある人材課題を確認

現在の経営課題が何であるか、(「販路を拡大できない」、「価格転嫁ができない」、「人材が採用できない・定着しない」など)をチェックリストで確認し、該当する経営課題の背景に、どのような人材の課題が潜んでいるかを確認。

STEP
課題に対する人材戦略を検討

STEP1で明らかになった課題に対する人材戦略を、「中核人材の採用」、「中核人材の育成」、「業務人材の採用・育成」の3つに整理し、具体的な対策(副業・兼業人材の活用、リスキリングによる人材育成、人事評価制度の見直しなど)を検討。

※中核人材:事業上の様々な業務において中核を担う人材、高度な専門性を有する人材
※業務人材:
事業運営において、各部門/業務の遂行を担う人材。専門性や技術レベルは高くないが、事業の運営に不可欠たる労働力を提供する人材。

STEP
人材課題の解決するための具体的な取組の確認

STEP2で定めた人材戦略に取り組む際のポイントや、取り組みに活用できる政府の支援策、サポートしてくれる支援機関(よろず支援拠点、商工会・商工会議所、地域金融機関、ハローワークなど)を紹介。

上記に加え、「経営課題に基づき、計画的に数年後を見据えた人材の採用・育成・活用に取り組み、一定の成果を上げた事例」を事例集として公表しています。
こうした具体的な事例は、経営者が自社の人材課題に向き合ううえでの参考になり得るでしょう。

以下のように、官民で様々な人材マッチングサービスが存在します。
人材の獲得においては、こうした仕組みの活用も有効です。

事業名/
実施主体
概要、支援対象企業等マッチングする人材・これまでの実績等
プロフェッショナル人材事業
【内閣府・内閣官房】
・2015度より事業開始。
45道府県が拠点を設置し、企業の人材ニーズを抽出、人材紹介会社と連携しながら元大企業社員やデジタル人材等ハイレベルな人材をマッチング。
・制度を利用する企業について、常勤雇用は売上高5億から100億まで満遍なく支援実績があり、副業兼業人材の活用は売上高5億や10億円など比較的規模の小さな中小企業に対する支援実績が多い。
・2023年度までに、26,098件のマッチング(常勤雇用:22,708件、副業兼業:3,390件)。
常勤雇用は生産管理、総務・経理等幅広い業務に対するマッチング実績が多く、副業人材は「販路開拓」や「EC強化」などスポット的な業務を任せられる人材のマッチングが多い。
先導的人材マッチング事業
【内閣府】
・2020年度より事業開始。
・地域金融機関等が企業の人材ニーズを抽出し、人材紹介会社と連携する等して元大企業社員やデジタル人材等ハイレベルな人材をマッチング。
・本事業では、地域金融機関等に対し、マッチングの成約に応じた補助金を付与。
・制度を利用する企業について、売上高5億や10億円など比較的規模の小さな中小企業に対する支援実績が多い。
・2023年度までに、8,333件のマッチング(常勤雇用:4,049件、副業兼業:4,284件)。
常勤雇用は生産管理、総務・経理等幅広い業務に対するマッチング実績が多く、副業人材は「販路開拓」や「EC強化」などスポット的な業務を任せられる人材のマッチングが多いという傾向は、プロフェッショナル人材事業と同様。
地域企業経営人材マッチング促進事業
(レビキャリ)
【金融庁】
・2021年10月より本格稼働。
・地域の中堅・中小企業の経営人材確保を支援するため、地域経済活性化支援機構(REVIC)に大企業人材と地域企業をつなぐ経営人材マッチングに特化した人材プラットフォームであるREVICareer(レビキャリ)を整備。
地域金融機関が人材紹介会社等とも連携して、経営改善支援サービスの一環として取引先企業への人材マッチングに取り組む。
・レビキャリを活用して大企業人材を採用した地域企業に対し、成約年収に応じて給付金を支給。(先導的人材マッチング事業との併用可)
・2023年度までに、人材の登録者数は2,889名であり、72件のマッチング実績あり。2023年度までに、登録された地域金融機関数は128先であり、その内31先が成約案件を創出。
・大企業に在籍していた、また現に在籍している経験を活かした経営者への助言を行う役割や、営業、生産管理等における管理職としての経営人材をマッチング。
ビザスク
【株式会社ビザスク】
・株式会社ビザスクが運営している社外人材活用支援サービ
スとして、企業の悩みを踏まえてエキスパート人材をマッチングさせ、伴走的に支援する「ビザスクpartner」と、社外取締役や監査役などの役員クラスの人材をマッチングさせる「ビザスクboard」を提供。
・登録者数60万人超、500カテゴリ以上の業界/職域に対応した国内最大級のマッチングサービス。
・ただし、登録者数の大半は米国Coleman買収をきっかけとした海外人材。国内人材は17万人程度。
・「ビザスクpartner」においては、契約期間や、契約形態(月1回~週5)のカスタマイズが可能。
・「ビザスクpartner」では、新規事業の壁打ち、マーケティング戦略のアドバイス、DX人材育成などの企業の悩みを専門領域を持つエキスパート人材とマッチングさせ、伴走的に支援。
・「ビザスクboard」では、海外勤務と役員経験のある女性人材や、新規事業創設と役員経験のある人材などのマッチング実績あり。
チイキズカン
【株式会社XLOCAL(クロスローカル)】
・株式会社XLOCAL(クロスローカル)が運営している人材マッチングサービス。都市部のプロ人材を採用するためのダイレクトスカウトサービスを、地方企業へ提供
・利用する企業は売上高数十億円規模の企業が多く、効果の見えやすいDX人材などにニーズがある。また、マッチングする人材は20歳から40歳の年齢層が多い。
・マッチングに当たっては「年収換算1,000万円以上」、「“複業”でも働ける」、「内部人材として採用」の3つのルールを課しているリース取引により設備投資の資金を賄うケースもある。
・営業戦略、新規事業、人事(採用戦略)システム(EC戦略)など、多岐にわたる分野の “複業”人材のマッチング実績あり。
・登録されているプロ人材は、実際に経営の最前線にいる現役で、平均年齢は39歳。登録者の約4割が経営経験者。
・プロ人材の登録者数は約2,800名(2024年4月時点)であり、事業を開始した2023年10月から6か月で26名のマッチング実績あり。

今回は、「人材の確保・育成、組織体制の構築」に着目し、中小企業庁の取り組みや官民様々なマッチングサービスについて見てきました。

本連載における具体的な各テーマの紹介は、今回で終了です。
次回の記事は、本連載の最終回として、100億企業の創出に向けた政策の方向性をサマライズしていきます。

~あわせて読みたい~
【中小企業施策 #01】行政情報にアンテナを張ろう
【中小企業施策 #02】国の令和7年度中小企業関連予算(令和6年度補正予算)
【中小企業施策 #03】中小企業関連施策に係る税制改正(前編)
【中小企業施策 #03】中小企業関連施策に係る税制改正(後編)
【中小企業施策 #04】日本の産業構造はどうなるのか
【中小企業施策 #05】なぜいま、中堅企業の創出が着目されているのか?
【中小企業施策 #06】「100億企業」って?
【中小企業施策 #07】「100億企業」をめざすきっかけ
【中小企業施策 #08】成長ポテンシャルのある経営者を後押しするアプローチ
【中小企業施策 #09】100億企業の特徴
【中小企業施策 #10】100億企業の成長パターン
【中小企業施策 #11】成長段階の課題と打ち手
【中小企業施策 #12】成長段階の課題と打ち手(設備投資/研究開発)
【中小企業施策 #13】成長段階の課題と打ち手(組織・人材/M&A)
【中小企業施策 #14】成長段階の課題と打ち手(資金調達/相談相手)
【中小企業施策 #15】経営者ネットワーク
【中小企業施策 #16】成長資金の調達方法
【中小企業施策 #17】人材の確保・育成、組織体制の構築(前編)
【中小企業施策 #17】人材の確保・育成、組織体制の構築(後編) ※本記事
【中小企業施策 #最終回】中小企業施策の重要ポイント