連載:中小企業施策の重要ポイント~③中小企業関連施策に係る税制改正(後編)~

※本記事の内容は、2025年2月26日時点の情報に基づいたものです。

前回の記事で、中小企業関連施策に係る令和7年度の税制改正で、注目すべき2つのポイント「産業用地整備促進税制」と「中小企業経営強化税制」についてご紹介しました。
本日は、上記2つのポイントに着目した背景を見ていきましょう。

以下の図は、経済産業省の「令和7年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」から抜粋したものです。

前回の記事で紹介した「産業用地整備促進税制」の創設目的として、地域経済に波及効果をもたらす国内投資を後押しすることが掲げられており、各地の産業集積の形成についても触れられています。

図1. 国内投資の拡大/各地の産業集積の形成

出所:経済産業省 令和7年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】2024年8月30日より

産業集積とは「比較的狭い地域に、相互に関連の深い多くの企業が集積している状態」のことです。
同じ産業や関連企業が一箇所に集まることで、コスト削減や効率化、イノベーション、地域全体の競争力強化が可能となります。
地域経済を大きく左右するものであり、また、小資本の中小企業にとっては、自社のリソース制約を超えた事業展開を可能とし得るものです。

上記の図「国内投資の拡大/各地の産業集積の形成」を見ると、産業としては、半導体・自動車・医薬品・蓄電池が挙げられています。
また、場所については、南から熊本、広島、大阪、愛知、山梨、福島、宮城、岩手、北海道にマークがされています。これらの産業/場所には、今後の「産業集積の形成」についての行政の思惑が感じられます。

このような産業集積の形成の際し、先日のブログ記事でご紹介した「中小企業成長加速化補助金」や「中堅・中小成長投資補助金」を活用する姿が想像されます。

背景②:「100億企業」への言及

以下の図も、経済産業省の「令和7年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】」から抜粋したものです。
中小企業のピラミッドの中で、売上100億円超の中小企業(100億企業)が強調されています。

図2. 中小企業のピラミッド

出所:経済産業省 令和7年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】2024年8月30日より

当該資料の中で、『「100億企業」は、高いレベルで外需と内需を取り込み、収益を上げて生産性向上(イノベーション)を図り、賃上げを実現し、人口減少社会においても、地域経済の好循環を先導する存在』とされています。

中小企業経営強化税制で「100億企業を目指す中小企業に対する上乗せ措置」が創設されるのも、上記が背景となっており、中小企業施策が「100億企業」の創出に力を入れていることが推測されます。


今回の記事では、中小企業関連施策に係る令和7年度の税制改正の中で、「産業用地整備促進税制」と「中小企業経営強化税制」の2つに着目した背景についてご紹介しました。

次回は、日本全体の産業構造の「今後」について大胆予測をしていきます!