※本記事の内容は、2025年5月31日時点の情報に基づいたものです。
前回の記事では、「成長ポテンシャルのある経営者を後押しするアプローチ」を見てきました。
本日は、100億円企業の特徴について、「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」の報告書をベースに見ていきましょう。
報告書では、東京商工リサーチの提供データを基に、2002年~2022年の間に売上高10-70億円台から売上高100億円以上に成長した企業の成長過程を、非成長企業と対比しつつ分析しています。
こうした分析の結果、挙げられた「100億企業の特徴」は以下の3つです。
1. 総資産に対する資金調達の割合

まず挙げられる特徴は、「総資産に対する資金調達の割合の変化」です。
100億企業には、成長過程において、総資産に対する借入金の割合は低下し、利益剰余金等の割合は増加するという傾向が見られます。
利益剰余金を確保して自己資本比率を高めることで、「自己資金での投資」が可能になるほか、「借入余地が拡大する」「出資を受けやすくなる」など、資金調達の幅も広がります。
2. 取引依存度と経常利益率

利益剰余金を確保して自己資本比率を高めるためには、経常利益率を高めることが重要です。
100億企業は成長に伴い、経常利益率を向上させています。
また、100億企業では、特定の1社への取引依存度の高い企業は少なく、「特定の1社への取引依存度が低い企業群のほうが、経常利益率の高い企業数が多い」など、取引依存度は経常利益率との関係が見られます。
特定企業への依存を脱却して多様な取引先を持つことは、成長する企業の多くに共通して見られる特徴です。
成長にあたっては、他社と差別化された独自のビジネスモデルを構想し、 自社でイニシアティブを持つことが重要です。
3. 投資・研究開発・輸出

100億企業は成長の前後で、「有形固定資産や研究開発費、輸出実績企業比率が伸びている」という特徴もあります。
非成長企業と比較すると、100億企業での伸びは顕著であり、成長の過程において、投資や研究開発、輸出等を積極的に行っていることが見てとれます。
業種によって顕著な差が見られる指標は異なりますが、例えば食料品製造業では、有形固定資産について、非成長企
業では横ばいであるのに対し、成長企業では顕著に伸びています。
今回は、「100億企業の特徴」についてみてきました。
次回の記事では、「100億企業の成長パターン」を考えていきます。