※本記事の内容は、2025年6月24日時点の情報に基づいたものです。
前回の記事では、「100億企業が成長段階で直面する課題とその打ち手」を見てきました。
今後数回にわたり、この「成長段階ごとの課題と打ち手」を深堀りしていきます。
今回はその第一回として、事業戦略の実行フェーズにおける設備投資/研究開発の視点から「成長段階の課題と打ち手」を見ていきましょう。
参考資料は「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会」の報告書です。
「設備投資」の観点

企業が成長していくためには、「事業戦略」をしっかり描くだけでなく、その戦略を実行するための投資が不可欠です。
特に、モノ(設備)、技術(研究開発)、ヒト(人材)への投資が重要となります。
まずは、モノへの投資(設備投資)の観点から、企業の売上規模ごとの課題と打ち手を見ていきましょう。
■ 売上高1〜10億円
この段階では、機械設備の更新が主な投資となります。
事業を拡大していく中で稼働率の向上、生産の効率化を図ることが大きな課題です。
打ち手として、多くの成長企業が、数百万円から数千万円規模の機械設備に投資を行っています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れた機械設備への更新や、ハード機能をソフトで実現すること(ソフトウェア・ディファインド、クラウドサービス等)の導入も検討対象です。
また、生産効率を上げるために一部工程を外部委託する企業もあります。
■ 売上高30〜50億円
この段階になると、さらに大規模な対応が求められます。
機械設備の稼働率向上や効率化に加え、建物付属設備も含めた生産体制全体の強化が必要となります。
また、販路拡大に伴い、販売管理の効率化も課題となってきます。
打ち手として、生産ラインや生産拠点の整備に数千万〜数億円規模の投資を行う企業が多く、生産工程の外注化も検討されます。
販売面においては、CRM(顧客管理システム)導入による業務効率化を進める企業が増えています。
■ 70億円以上
売上高70億円以上になると、市場シェアの拡大に伴い、既存の生産拠点だけでは生産能力が不足するため、新たに国内外での生産拠点整備が必要となります。
打ち手として、土地や建物も含めた数十億円規模の大規模投資が必要となるケースもあり、生産・物流・販売拠点を総合的に整備し、全国または海外での供給体制を構築することが求められます。
「研究開発」の視点

技術への投資(研究開発)の観点での「課題と打ち手」は以下の通りです。
■ 売上高1〜10億円
この規模の企業では、まず自社の強みとなる基盤技術やコア技術を特定することが必要となります。
と同時に、生産技術の強化も課題です。
この段階では、経営者自身が、基盤技術・コア技術・生産技術のチームに直接指導を行うことが打ち手となり得ます。
自社の技術的な方向性を明確にしながら、新たなコア技術の開発に着手していくことも必要です。
■ 売上高30〜50億円
この段階になると、付加価値を持ち、継続的に売れる製品を生み出すための製品開発力が求められるようになります。
これに加え、生産技術の維持や強化も欠かせません。
打ち手としては、基盤技術・コア技術・生産技術の指導対象を、業務人材含め拡大していくことが有効です。
また、外部研修等の活用によって、研究開発を担う人材の能力向上を図る成長企業も多くみられます。
■ 70億円以上
売上高70億円以上の規模になると、既存の基盤技術・コア技術の延長の製品開発、生産技術の強化だけでは、
更なる売上拡大が難しくなります。
そこで求められるのが、産学連携や他社との連携による新たな技術の獲得です。
成長企業は、AIやITなどの新技術を取り入れることで基盤技術やコア技術の高度化を図り、新製品の開発や生産技術の飛躍的な向上に取り組んでいます。
今回は、「100億企業が成長段階で直面する課題とその打ち手」を、設備投資/研究開発の観点からみてきました。
次回以降の記事では、また別の観点から「課題とその打ち手」を深堀りしていきます。